苦境を乗り越えた先の景色 〜マオfromSID Weekly LIVE 2020~再会~感想レポ〜
※マオfromSID…4人組ヴィジュアルバンドのボーカル「マオ」のそのアーティスト名。
待ちに待ったライブ。
最後に現地参加は2月末のCYaRon!小倉。
実に8ヶ月振り。マオさんに会うのは去年のクリスマスライブなので10ヶ月。
今回のライブ会場の座席数が302。その約50%ということで150前後というかなりの狭き門を突破して会場行きの切符を手にすることができた。
会場に入ってからまず新型コロナウイルス対策アプリのインストール確認。検温。チケットは全て電子且つ接触回避の為本人で認証。手荷物検査も自分で開封等今までにない形での入場だった。
自分は2階席の最前列だったので、ライブステージ全体と1階前寄りの客席を見下ろせる場所だった。
1席空けての半分の定員だった為、どこか少ないような気もした。そして少ないと言えど隣に人がいないことで少しのゆとりはあった。
そのゆとりはコロナウイルスが生んだものか…と、何とも言えない複雑な気持ちではあったが無事にライブはほぼ定刻通り始まった。
ステージ上は各メンバーごとに仕切りのアクリル板が設置されており、アーティスト側も対策を講じた上でのライブだった。
そしてライブ中の感染拡大防止対策は当然客側でもあった。
・立ち禁
・声出し禁止
・マスクの常時着用 etc...
今までのライブで出来ていたことができないことがこれほどにまで苦痛と感じた事はなかった。
演者の名前も呼ばないし歓声もNG。声で応えることができない。できるのは拍手だけ。
マオさんの姿を見ることができる。でも声を届けることはできないもどかしさ。
でも、それを1番感じていたのはマオさんであること。辛い気持ちは自分たちファンだけじゃないことをこのライブで知ることができた。
自分たちは声を出せないけど会えることができた。
でもマオさん達アーティスト側はその会える時まで「会えない形で音楽を届けてくれた」ことに対する苦しさを直接教えてくれた。
マオさんはオンラインによるライブ配信を8月末に実施した。僕は画面越しでも久しぶりにマオさんの音楽を楽しむことができ、家だから声も出して楽しむことができた。
しかしそのオンラインライブで今までにない緊張と不安を抱いてたのが配信をするマオさんたちだったこと。その不安や緊張感が、如何にライブで歓声を届けてくれる…会場にいてくれるファンが大切で大きな存在だったかを改めて知ることができた。
マオさんが今日のライブ中言ってたことは「会場も小さいし、半分だから寂しいかな…と思ったけど、みんなの顔見れただけですごく嬉しいし寂しくない。」
どれだけの数であれ、ファンが目の前で見てくれることがアーティストにとってとてつもなく大きな力になるのか。それを改めて気付かされたし知ることができた。
僕は9月に、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の2ndライブを無観客生配信という形で鑑賞した。そのライブ後に演者さんたちが口を揃えて言っていたのは「会いたかった」だった。
僕はマオさんのMC中に虹ヶ咲の子たちの言葉を思い出した。
声は出せない。でも何より会場にいてくれることが大きな力になる。
だから、次はキャパが半分だろうが声を出せなかろうが、有観客ライブであってほしい。1度目の前にファンが居ない景色を見ている虹ヶ咲10人のメンバーが、次のライブで目の前にファンがいる景色を見たらきっと今までにない感動が生まれるだろうし、自分たちも今までにない感動に包まれるはず。
それは虹ヶ咲だけじゃない。10月10日と11日にオンラインライブを控えているAqoursにも当てはまるものだと思う。今まで当たり前だったことがこんなにもありがたいものなんだと…アーティスト、そしてファンが気付くことができるだろうし、そこで新しい絆や強い想いが生まれると僕は思っている。
話はマオfromSIDに戻します。
マオさん自身MCで楽しませる人だから、笑いたいけどなかなか笑えない。言葉を発せないことがものすごいむず痒かった。
「笑いたい時は拍手!」だったり「難しいけど…徐々に慣れていこうね」など、今だからこその状況に合わせた楽しませ方をマオさんがライブ中に教えてくれたり、これもまた今だからこその形なのかもしれない。
ライブパフォーマンスは、コロナ禍の前と変わることのない圧巻のものだった。懐かしい曲や知っている曲。久しぶりに聴いた曲。
マオさんは最近の楽曲より90年代や80年代のカバーソングを披露してくれることが多いから、マオさんをきっかけに、なかなか触れる機会の無い昭和の曲を知れるからこそ自分の中の楽曲ライブラリの幅が広がる。
今日もまた初めて聴いた曲で気に入ったものもあったし、サブスクで配信してたら早速聴いてみよう。なんて思えるように、新しい出会いのきっかけをたくさんくれる。それがマオfromSIDのライブの魅力の一つだと感じてる。
これはマオfromSIDのファーストシングルの楽曲「月」
マオfromSIDのライブの最後にやる言わば定番ソング。
優しい歌声と少ない楽器の音色だからこそ、心にとても響き渡る至極のバラードだ。
僕はこの「月」を初めてマオさんのライブに行ってからたくさん聴いてきた。もちろん感動で涙を流すことが多いのだが、今日聴いた「月」は今までにない意味を作り出していた。
夜空に浮かべた 月と静けさ
会いたい夜は会えない夜で
どれくらい思えば心伝わる
波の音にも似てる騒めき
会えない時間がずっと続いてた。辛い時をすごしていた。でもそれは僕らファンだけじゃない。マオさんも同じだった。
あなたの傷も涙も そっとそっと拭ってあげる
時間をかけて ゆっくりでいい
もう離れたりしないから
最後の雨が上がって 雲が消えたら聞かせてほしい
誰も知らない二人の距離で 今夜寄り添っていよう
この歌詞が今日のライブで一番心に響いた。
マオさんがライブ中に言った言葉
「この状況下だからこそ、落ち着くその時が来るまで…できる形で歌い続ける。だからその時が来てもその先の未来もずっと応援してほしい」
うろ覚えだけど、こんなことを言っていた。
ライブはできても、100%ではなくお互いに辛い状況。
声を出せない。言葉を返してもらえない。
そんなもどかしさを抱いたままでもできる今の形をマオさんが届けてくれた。
僕らは「声を出す以上に会いに行くことに対する意味」を見つけることができた。
終わりが見えない先だからこそ、マオさんはいろんな形で僕らに「今」を届けてくれるし、「未来」の希望を見せてくれた。歌という形で寄り添ってくれるマオさんに、僕らが今できることは会いに行くこと。
それでも会えない…会うことが難しいファンはきっといるはず。そんなファンにだっていろんな形を届けてくれるのがマオさんだ。
それだけの信頼がある。今回ライブを開催してくれたのも。今できる形で届けてくれたのも。マオさんを信じられる大きな理由を再確認できたのも今回の8ヶ月振りのライブにおける大きな気づきなのかもしれない。
このブログを読んでいる人で、マオfromSIDを知っている人が何人なのかは分からない。
でも、僕が今憧れていて、目標にしていて、「こうなりたい!」って目指す人の凄さを伝えたかった。
ライブレポというよりも自分が感じ取ったものばかりになってしまったけど、僕は「今だからこそできるライブ」と「忘れていた当たり前に対する感謝の気持ちと新しい気持ち」を伝えたい。
新型コロナウイルスという未曾有の状況であり、お互いに苦しみを味わいそれを乗り越えた今だから届けられる精一杯を伝えてくれるアーティストさんの気持ち。そしてそれに応えたいファンの気持ち。
僕はいろんなものをこのライブで感じ取ることができた。
でも、本当の「再会」は……まだ先。
見えない先の未来だけど、光を見せてくれた。
それが…マオfromSIDだった。